ライフビジョン通信

残業代の計算方法

会社において毎月行わなければならない給与計算、

その中でも、残業代の計算はいくつかの手順を踏む必要があります。

そこで、本日は残業代の計算をする際のポイントについてお話していきます。

残業代の計算方法【月給制の場合】

1.(割増賃金の基礎となる)月給として定めた額÷月平均所定労働時間数=割増賃金の基礎となる賃金

2.割増賃金の基礎となる賃金×残業時間数×(1+割増率)=残業代

STEP1 (割増賃金の基礎となる)月給として定めた額を算出する

月給の一部として手当を支給している会社も多いと思いますが、

すべての手当を割増賃金の基礎に含めることが適当でない場合もあります。

労働者の労働の量や質に関係なく支給される、家族の人数によって金額が異なる家族手当や、

通勤の距離によって金額が異なる通勤手当などを、

割増賃金の基礎に含めることは適当でないからです。

割増賃金の基礎に含めることが不適当な手当として次のものがあげられます。

・家族手当(扶養家族数に応じて支給されるものに限る)

・通勤手当(電車通勤の場合の定期券代や自動車通勤の場合の通勤距離などに応じて支給されるものに限る)

・別居手当

・子女教育手当

・住宅手当(一律支給を除く)

・臨時に支払われる賃金

・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

具体例で考えてみます。

→この場合割増賃金の基礎となるのは、

STEP2 月平均所定労働時間数を算出する

月所定労働時間とは、労働者がその月に労働契約上働くとされている時間のことをいいます。

では、なぜ残業代の計算に月所定労働時間数ではなく、月平均所定労働時間数が必要なのでしょうか?

それは、月所定労働時間数を使って、割増賃金の基礎となる賃金を算出すると、

月の日数により、月ごとに異なった金額になってしまうからです。

例えば、28日しかない月で計算すると、月所定労働時間が短くなり、

逆に、31日ある月で計算すると、月所定労働時間が長くなります。

このように、同じ月給、同じ残業時間にもかかわらず、

残業代が月の日数によってだけ異なるのは、適当ではありません。

そこで、月平均所定労働時間数をつかって、月によって差が出ないように

残業代を計算する必要があります。

これから、月平均所定労働時間数の算出方法についてお話しします。

  • 年間所定労働日数が決まっている場合

年間所定労働日数×1日の所定労働時間数÷12か月

  • 年間の所定労働日数が決まっていない場合

(365日-所定休日日数)×1日の所定労働時間数÷12か月

具体例X社(2022年の場合)

・1日の所定労働時間数8時間

・土日祝が休み

・年末年始休暇(12/29~1/3)、夏季休暇(8/13~8/16)あり

土日祝は年間120日+年末年始(3日)+夏季休暇(2日)*となり年間休日は125日

*祝日、年末年始休暇、夏季休暇は土日と被ったらカウントしない

なので、X社の月平均所定労働時間数は

(365日―125日)×8時間÷12か月=160時間となります。

STEP3 割増率の確認

労働時間の種類割増率
時間外労働2割5分以上
法定休日労働3割5分以上
深夜労働2割5分以上
時間外労働+深夜5割(2割5分+2割5分)以上
法定休日労働+深夜6割(3割5分+2割5分)以上

STEP4 残業代の計算

具体例STEP1、2で登場したX社Aさんが

普通残業10時間

内深夜労働1時間

法定休日労働4時間働いたとします。

割増賃金の基礎となる賃金の計算は(50銭未満切捨て50銭以上切上げで計算するとします)、

したがって、残業代は(50銭未満切捨て50銭以上切上げて計算するとします)、

*今回の場合、普通残業時間の中に深夜残業時間が含まれているので、1+0.25ではなく、0.25のみをかけます

残業代の計算方法【時給制の場合】

1.時間給*×残業時間数× (1+割増率) =残業代

*時給制の場合、時間給そのものが割増賃金の基礎となる賃金となります

残業代の計算方法【日給制の場合】

1.日給÷1日の所定労働時間数=割増賃金の基礎となる賃金

2.割増賃金の基礎となる賃金×残業時間数× (1+割増率) =残業代

いかがでしたでしょうか。

残業代の計算は、従業員の給与を決める重要な要素なので、

正確に行う必要があります。

残業代を正確に支払わなかった場合、労働基準法(法24条1項本文、法37条)違反となり、

6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金(法119条)の罰則が

適用される場合があります。

残業代を正確に計算し支払うことが、労使の健全な関係を築くには不可欠です。

疑問点がございましたら、当事務所までご相談ください。