勤怠管理のDX化成功のカギは就業ルールの簡素化!〜勤怠システム導入で注意すべき4つのポイント
D X(デジタルトランスフォーメーション)と聞くと、
どのようなイメージをお持ちでしょうか?
業務が効率化される!
デジタル機器の導入や使い方に慣れるまでが大変そう!
国としてはDXによって生産性を上げていくことを施策に掲げ、
そのための補助金や助成金も用意をしています。
実際に、I T機器の導入で効率化した、という企業もあるでしょう。
ですが、DX化によって必ずしも効率性や生産性が上がるのかというと、
そうではない実態もあります。
そもそもDX化というのは単なるデジタル化とは異なり、
本質的には「デジタル技術でビジネスモデルや働き方を変えること」です。
IT社労士という肩書きで、労務に関するDX化のサポートを行う中で見えてきた、
勤怠管理のD X化のポイントについてお伝えします。
勤怠システムには限界がある
① 勤務実態に応じた細かい設定ができない場合がある
週の法定労働時間は40時間と定められていますが、
労働者10人未満の小売業、理美容業、医業業、飲食店などの
事業所(特定措置対象事業場)の法定労働時間は44時間となっています。
ですが、システムによってはこの44時間の設定ができないため、
仮に44時間の就労時間のうち4時間分は残業(法定外労働時間)と
自動で見なされてしまいます。
その場合は、勤怠確認や給与計算の際に、
人の手で修正をする必要があります。
② イレギュラーな対応(独自のルール対応)が難しい
有給休暇などは会社独自のルールを敷く場合も多く、
つまづきやすいポイントです。
仮に、1日の労働時間が7時間30分(午前:3時間30分、午後:4時間)
の会社において、午後の半日(4時間)に有給休暇を取得した場合、
残りの半日分(3時間30分)は午前に取得しなければならないルールであっても、
そのような設定ができません。
また、午前・午後のどちらでも半日分の消化とみなすというルールの場合、
30分の差が生まれることで不公平感をもたらす恐れがあります。
対策として1時間単位での有給休暇の取得を認めた場合、
システムの機能上30分単位の取得ができず、
手計算で管理をしなければならなくなり、二度手間となります。
③ データエラーがあると先に進めず手間が増える
勤怠システムと給与システムの連携を自動化することで
効率化を図る会社は多いですが、ここにも落とし穴があります。
勤怠管理においては従業員本人の打刻が基本となりますが、
打刻漏れ・早退や遅刻・残業申請承認忘れなど、
さまざまなミスが生じるものです。
これらのミスがデータ上のエラーとなり、
給与システムへのスムーズな連携が難しくなることに加えて、
確認のための時間や手間が増えてしまいます。
従業員への打刻管理の徹底がなされていない事業所はエラーも頻出し、
結果として紙のタイムカードよりも処理に時間がかかってしまうのです。
④ 設定が煩雑なため、法的知識・PCリテラシーが必要となる
まずは勤務実態に合わせた勤怠システムの設定をすることが重要ですが、
知識のないまま実態に合わせた設定をしたためにエラーが生じることもあります。
ありがちなのが、エラー解消のために設定や入力値を変えるなどして
労働時間の修正をしてしまうこと。
そのような処理をしていると法令違反になる恐れや、
勤怠管理の信頼性も失われますので要注意です。
エラーの出ない設定をしていくためには労働関係法の知識が必要になりますし、
多様化する働き方に合わせた勤怠管理を整備し、
さらにDX化していくとなると、PCスキルも必要になってくるでしょう。
見直すべきは就業ルール
便利なアプリを入れたから大丈夫!
これまでの作業が半分の時間でできる!
そんな夢を抱いて導入したシステムが活かされず
余計に手間がかかっているとすれば、見直すべきはシステムではなく、
そもそも就業ルールが分かりやすく整備されているかという観点です。
複雑なマイ(企業)ルールがあればあるほど、
自動化が難しいことは先に述べたとおりですね。
DX化成功のカギは「就業ルールをいかに簡素化するか」。。
場合によっては、システムに就業ルールを合わせていく必要もあるでしょう。
システムによってできることとできないことがあるので、
専門家に相談しながら効率的に進めていくことをお勧めします。