ライフビジョン通信

多様な働き方の推進に対応できていますか?人材流出の危機に備える雇用保険制度改正の2大ポイント

円安や物価高などで生活が困窮する人も増える中、雇用のセーフティネット構築の強化を図る目的で、雇用保険制度も大きな改正が行われています。

これらはいわば「守り」の側面ですが、それだけの理由にとどまらず、多様な働き方を推進するための「攻め」の側面も持ち合わせています。

リスキリング」という言葉をご存知でしょうか? 
経済産業省の定義では、

「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」


とあります。

国を挙げて推進しているものですから、仮に、人への投資に遅れをと企業や業界においては、人材流出の大きな危機となることでしょう。

今回はこの中から特に注目したい2つの改正ポイントについて説明します。

1.給付制限期間の短縮・撤廃

これまで、自己都合による退職の場合、求職者がハローワークに失業給付(いわゆる「失業保険」)の手続きをしたのち、2か月の給付制限期間(いわゆる「失業保険を受給できない期間」)が設定されていました。

この制度は、失業保険受給の乱用を防ぐためのものでしたが、近年の人手不足の中、再就職の速度を高めるためと、
リスキリングの機会を創設する目的として、2025年4月1日より、給付制限期間を1か月に短縮し、かつハローワークの受講指示を受けて公共職業訓練等を受講した場合には、この1か月の給付制限期間を解除(0日にする)するという改定が行われます。

この改正により、自己都合退職のハードルが下がることにより、雇用の流動性を促進するものと思われます。

2.雇用保険加入要件の拡大(週所定労働時間10時間、マルチジョブホルダー制度)

現在は、「週の所定労働時間20時間以上、かつ31日以上雇用されることが見込まれている」ことが雇用保険の加入条件となっています。
これが、2028年10月以降、「週の所定労働時間10時間以上」が雇用保険の加入条件となります。
雇用保険の保険料は事業主と労働者双方の負担となりますし、
拡大した対象者に対しても表で示したような改正への対応をすることとなります。
簡単に人を雇ったり辞めさせたりといったことが難しくなるかもしれません。


雇用保険加入要件の拡大についてもう1点注意したいのが、
複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者を対象とした「マルチジョブホルダー制度」です。
2022年1月からすでに始まっている制度ですが、
例えば、A事業所で週所定労働時間10時間、B事業所でも週所定労働時間10時間などと複数の事業所の合計週所定労働時間が20時間(2028年10月以降は10時間)以上働く場合は、本人が希望することで雇用保険に加入することが可能となっています。
この要件をクリアする労働者から希望された場合には、事業所は拒否することができません。


いかがでしょうか。
法改正に対応するということは、要件的にクリアすればいいということではなく、それに付随する社内対応や組織変革がもとめられるということです。

紹介した以外にも、教育訓練給付の給付率アップ、育児休業給付の安定的な財源確保など続々と法改正があり、その結果として、雇用保険料率(現在の事業主負担分現在は9.5/1000)が上昇する可能性すらあります。

変化に対応できる会社として生き残っていくためにも、不安なことや不明なことは信頼できる専門家にご相談ください。