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1年単位・1週間単位の変形労働時間制

近年、多様な働き方に対応するため変形労働時間制が導入を導入する企業が増えています。

変形労働時間制を取り入れることで、繁忙期とそうでない時期を見越して働き方を調整することができ、

使用者にとっても労働者にとっても効率の良い制度といえます。

 今日は、変形労働時間制の中で、1年単位の変形労働時間制と1週間単位の非定型的変形労働時間制について、

次のような内容で

・実際の働き方はどうなるのか

・どのように導入するのか

・どのようなメリットあるいは課題があるのか

ご紹介したいと思います。

1. 実際の働き方はどうなるのか

 次に、変形労働時間制のもとで実際の働き方はどうなるのでしょうか。

少し具体的にみていきたいと思います。

1.1 1年単位の変形労働時間制のもとでの実際の働き方

1.1.1 対象期間

 まず、変形労働時間制が適用される「対象期間」が定められます。この「対象期間」は、一か月を超え1年以内となります。

1.1.2 労働時間はどうなるのでしょうか

 「対象期間」では、

・一日の労働時間は10時間まで

・一週間の労働時間は52時間まで

働くことができます。

1.1.3 残業時間はどうなるのでしょうか

 残業時間は次の3つのようになります。

①一日の時間外労働

(1) 1日8時間を超える労働時間(例えば10時間)を定めた日:その時間(例えば10時間)を超えて労働した時間

(2) (1)以外の日:8時間を超えて労働した時間

②一週間の時間外労働(①の時間外労働は除きます)

(1) 1週40時間を超える労働時間(例えば52時間)を定めた週: その時間(例えば52時間)を超えて労働した時間

(2) (1)以外の週:40時間を超えて労働した時間

③対象期間の時間外労働(①、②の時間外労働は除きます)

・対象期間の労働時間総枠を超えて労働した時間

1.1.4 1か月に働く時間はどう考えればよいのでしょうか

 1年単位の変形労働時間制のもとでは、カレンダーが作成されますので、

そのカレンダーに沿って働くことになります。

1.1.5 お給料はどうなるのでしょうか

 通常の労働時間制度と異なるのが、残業時間(時間外労働)の取り扱いとなります。

1.1.3の残業時間に対して割増賃金が支払われることとなります。

1.2 1週間単位の非定型的変形労働時間制のもとでの実際の働き方

1.2.1 対象期間

 1週間単位で「対象期間」が定められます。この「対象期間」は、

一定期間(例えば、1年間)毎週対象となる場合と、

一か月のある期間の1週間(例えば、22日から25日の属する週の各1週間)が対象となる場合があります。

1.2.2 労働時間はどうなるのでしょうか

 「対象期間」では、

・一日の労働時間は10時間まで

・一週間の労働時間は40時間まで

働くことができます。

1.2.3 残業時間はどうなるのでしょうか

 残業時間は次の3つのようになります。

①一日の時間外労働:8時間を超えて労働した時間

②一週間の時間外労働: 40時間を超えて労働した時間(①を除きます)

1.2.4 1週間に働く時間はどう考えればよいのでしょうか

 各日の労働時間については、その前週末までに通知されますので、それに沿って働くことになります。

1.2.5 お給料はどうなるのでしょうか

 通常の労働時間制度と異なるのが、残業時間(時間外労働)の取り扱いとなります。2.2.3の残業時間に対して割増賃金が支払われることとなります。

2.どのように導入するのか

変形労働時間制を導入するには、労使協定の締結と就業規則の整備、および所轄労働基準監督署長への届出が必要です。それぞれについて、少し具体的にみていきます。

2.1 1年単位の変形労働時間制の導入

2.1.1 労使協定

 労使協定では、次のようなことを定めます。

1) 対象期間を1か月を超え1年以内とし、
2) 対象期間を平均し、1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内で、
3) 1日10時間、1週52時間以内(対象期間が3か月を超える場合、1週48時間を超える週の数について制限あり)、連続して労働させる日数の限度が6日(特定期間については1週に1日の休日が確保できる日数)
4) 対象期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間を特定するとともに、
5) 労使協定の有効期間を定める

2.1.2 就業規則

 始業・終業の時刻、休憩時間や休日は就業規則に記載しなければならないことになっています。

労使協定によって1年単位の変形労働時間制を採用することとなった場合には、

次の事項等を就業規則に定める必要があります。

1) 変形期間中の始業・終業の時刻

2) 休憩時間

3) 休日

2.2 1週間単位の非定型的変形労働時間制

2.2.1 労使協定

 労使協定では、次のようなことを定めます。

1) 1週間の労働時間を40時間以下とすること

2) 1日の労働時間の限度を10時間とすること

2.2.2 就業規則

 始業・終業の時刻、休憩時間や休日は就業規則に記載しなければならないことになっています。

3.どのようなメリットあるいは課題があるのか

 変形労働時間制にはいろいろなメリットがあります。

ここでは、労働者にとってのメリットと使用者にとってのメリットを具体的に考えてみます。

また、変形労働時間制を運用する場合の課題についても考えてみることにします。

 1年単位の変形労働時間制1週間単位の非定型的変形労働時間制
使用者にとってのメリット例繁忙期に所定労働時間を多く確保し、逆に閑散期では少なくして、年間を通じて残業代を抑えるメリットがあります。あらかじめ業務の繁閑を予測し、労働時間の割り振りを見直すことで、時間外労働の割増賃金も削減させることができます。
労働者にとってのメリット例閑散期に半休を含む時短労働や長期の休暇取得が期待できます。時間にメリハリをつけて働くことができるのでワークライフバランスを向上させることができます。
課題導入には、就業規則の変更、労使協定の締結と労働基準監督署への届出が必要など、手続きが煩雑です。小規模な事業場でしか認められていません。人数が少ない事業場で新たな業務が生じてしまうことは、担当者にとって負担が増えることになる可能性があります。

以上、1年単位の変形労働時間制と1週間単位の非定型的変形労働時間制をご紹介してきました。

ここでご紹介した他にもさまざまな細かいルールもあります。

「変形労働時間制」についてもっと詳しく知りたい、導入を検討したい、

とお考えの際にはぜひ当事務所にご相談下さい。