なぜ院長の想いはスタッフに伝わらないのか?クリニックの組織づくりで見直したい3つの習慣
「スタッフのためにいろいろ考えているのに、なかなか理解してもらえない」
「給与も上げているし、休みも取りやすくしている。それなのに不満ばかり出てくる」
クリニックの人事・組織づくりに関わっていると、このような悩みを耳にすることがあります。
一方、スタッフに話を聞くと、院長とは少し違った意見が出てくることも珍しくありません。
「院長が何を考えているのか分からない」
「忙しそうで話しかけづらい」
「頑張っていても、認めてもらえている感じがしない」
同じ職場で働きながら、院長とスタッフの間でこれほど認識が異なるのはなぜでしょうか。
そこには、立場の違いだけでなく、日々のコミュニケーションや組織運営の習慣が関係している場合があります。
院長の想いがスタッフに伝わることと、院長自身がスタッフを大切に思っていることは、必ずしも同じではありません。
今回は、クリニックの組織づくりにおいて、院長が見直したい3つの習慣について考えていきます。
院長とスタッフの間に生まれる「見えない認識のズレ」
院長とスタッフでは、日々の仕事で見ているものが異なります。
院長は、診療の質や患者満足度だけでなく、売上、人件費、設備投資、採用など、医院経営全体を考えなければなりません。
一方、スタッフは日々の患者対応や業務量、人間関係、勤務シフトなど、自分たちの働く環境に意識が向きやすいものです。
どちらが正しいという問題ではなく、立場によって見える景色が異なるのは自然なこと。
例えば、院長が経営上の必要性から新しい業務を導入したとします。
院長にとっては、患者サービスの向上や医院の将来を見据えた取り組みかもしれません。
しかし、スタッフに十分な説明がなければ、「ただ仕事が増えた」「現場の負担を分かってくれていない」と受け止められてしまう可能性があります。
経営者としての判断が正しくても、その目的や背景が伝わらなければ、スタッフの理解や協力は得られにくいのです。
では、このような認識のズレを減らすためには、何が必要なのでしょうか。
スタッフとの信頼関係を築くために見直したい3つの習慣
1. 挨拶や日常の態度に一貫性を持たせる
組織づくりにおいて、意外と軽視されがちなのが院長の日常的な態度です。
例えば、機嫌の良い日はスタッフに笑顔で接する一方、忙しい日や疲れている日は挨拶もせず、話しかけられても素っ気ない対応をしてしまう。
院長自身には悪気がなくても、スタッフはその変化を敏感に感じ取ります。
「今日は機嫌が悪そうだから、相談するのをやめておこう」
「何か怒られるかもしれないから、余計なことは言わないでおこう」
こうした心理が広がると、必要な報告や相談まで滞ってしまう可能性があります。
医療現場では、小さな情報共有の不足が業務上の問題につながることもあるため、決して軽視できません。
もちろん、院長も人間ですから、疲れている日や余裕のない日もあるでしょう。
大切なのは、感情を持たないことではなく、感情によって周囲への接し方を大きく変えないことです。
毎朝の挨拶、スタッフからの報告に対する返答、相談を受けたときの態度。
信頼関係は、特別な取り組みよりも、こうした日々の小さな行動の積み重ねによって育まれていきます。
2. 「感謝している」と「感謝が伝わっている」を区別する
院長から話を聞くと、「スタッフには感謝している」とおっしゃる方も多くいます。
しかし、スタッフに確認すると「感謝の言葉を言われたことがほとんどない」というケースもあります。
院長としては、給与や賞与を支払うこと、福利厚生を充実させることが、スタッフへの感謝の表れなのかもしれません。
もちろん、待遇改善は重要です。
ただし、金銭的な報酬と、日々の仕事を認めてもらうことは別のもの。
例えば、忙しい診療時間帯にスタッフが臨機応変に対応してくれたとき。
「さっきの対応、助かったよ。ありがとう」
この一言があるだけで、スタッフの受け止め方は変わることがあります。
また、感謝を伝える際には、何に対して感謝しているのかを具体的にすることもポイントです。
「いつも頑張ってくれてありがとう」よりも、「新人スタッフへの指導を丁寧にしてくれて助かっている」と伝える方が、自分の仕事を見てもらえている実感につながりやすいでしょう。
感謝は、心の中で思っているだけでは相手に伝わりません。
スタッフの行動を認め、それを言葉にして伝える習慣が、組織の信頼関係を支えるのです。
3. 指示を出すだけでなく、目的や背景を共有する
院長とスタッフの関係で、もう一つ重要なのが情報共有のあり方です。
クリニックでは、院長が方針を決め、スタッフが実行するという形になりやすい傾向があります。
しかし、指示された内容だけを理解して仕事をするのと、その目的まで理解して取り組むのとでは、仕事への向き合い方が変わってきます。
例えば、患者の待ち時間を短縮するために受付業務の流れを変更する場合。
単に「来月からこの方法に変えます」と伝えるだけでは、スタッフにとっては業務変更の負担ばかりが気になるかもしれません。
一方で、「患者の待ち時間に関する声が増えているため、受付から診察までの流れを改善したい」と背景を説明すれば、取り組む意味が理解しやすくなります。
さらに、「実際に運用する上で問題になりそうなことはないか」とスタッフの意見を聞くことで、現場に合った方法を検討することも可能です。
もちろん、すべての経営判断をスタッフに委ねる必要はありません。
重要なのは、経営者として決めるべきことと、スタッフの意見を取り入れるべきことを区別すること。
「何をするか」だけでなく、「なぜそれをするのか」を共有することが、主体的に行動する組織づくりにつながります。
組織づくりは「院長が変わること」だけで解決するのか?
ここまで院長が見直したい習慣を取り上げてきましたが、当然ながら、組織の問題をすべて院長個人の責任にすることは適切ではありません。
スタッフ側にも、報告・連絡・相談を適切に行うことや、互いに協力して仕事に取り組む姿勢が求められます。
また、業務分担が不明確であったり、教育体制が整っていなかったりすれば、どれほど院長が丁寧に接していても、不満やトラブルが生まれる可能性はあります。
だからこそ、日常のコミュニケーション改善と同時に、組織としての仕組みづくりも必要です。
例えば、定期的なスタッフ面談やミーティングの実施、役割分担の明確化、業務上の課題を共有する場の設定など。
院長の人柄や個人の努力だけに頼るのではなく、スタッフ同士が協力し、問題を解決できる組織を目指すことが重要ではないでしょうか。
まとめ:院長の想いを「伝えること」から組織づくりは始まる
クリニックの組織づくりにおいて、特別な制度や大きな設備投資が必要になるとは限りません。
まずは、日々の挨拶や態度を見直すこと。スタッフの行動に感謝を伝え、医院の方針や取り組みの目的を共有すること。
こうした小さな行動の積み重ねが、スタッフとの信頼関係を育む土台となります。
ただし、院長が一方的に想いを伝えるだけでは十分ではありません。
スタッフが何を感じ、どのようなことに困っているのか。その声に耳を傾けることも同じくらい大切です。
良い組織とは、院長の考えにスタッフが従うだけの組織ではなく、医院の目指す方向を共有し、それぞれが役割を果たしながら成長していける組織ではないでしょうか。
株式会社ライフビジョンコンサルタンツでは、全国の医療機関を対象に、人事・労務管理だけでなく、スタッフ面談や組織課題の分析、人事評価制度の構築など、幅広い組織づくりの支援を行っています。
院長とスタッフ、それぞれの立場や考えを理解しながら、医院に合った改善策を一緒に考えていくことを大切にしています。
「スタッフとの関係をもっと良くしたい」
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