病院・クリニックの障害者雇用は「採用して終わり」ではない!定着する職場をつくる3つのポイント
「障害者雇用を始めたいけれど、現場のスタッフがうまく対応できるか心配」
「採用したものの、どのように仕事を教えればよいのか分からない」
障害者雇用を検討している医療機関では、このような悩みを抱えることがあります。
特に病院やクリニックでは、患者対応や専門業務を優先しながら、障害のあるスタッフへの指導や業務管理も行わなければなりません。
そのため、受け入れ体制が十分に整わないまま採用を進めてしまうと、本人だけでなく、周囲のスタッフにも負担が生じる可能性があります。
障害者雇用において重要なのは、採用すること自体をゴールにしないことです。
本人の特性や能力を理解し、職場の一員として力を発揮できる環境を整えること。
それが長く働き続けられる職場づくりにつながります。
今回は、就労移行支援事業所を運営する立場から、医療機関における障害者雇用の定着に必要な3つのポイントを考えていきます。
なぜ障害者雇用では「採用後の定着」が重要なのか?
障害者雇用を検討する際、法定雇用率への対応をきっかけとする医療機関もあるでしょう。
もちろん、法律上の雇用義務を果たすことは重要です。
しかし、採用人数を確保することだけに意識が向いてしまうと、採用後の職場環境や育成方法について十分に検討できないことがあります。
例えば、次のようなケースです。
- 採用後に担当業務が決まらず、手持ち無沙汰になってしまう
- 指導するスタッフによって説明や指示の内容が異なる
- 本人が困っていても、誰に相談すればよいか分からない
- 周囲が必要以上に気を遣い、仕事を任せなくなってしまう
こうした状況が続くと、本人は「自分は職場の役に立っていないのではないか」と感じ、働く意欲を失ってしまうかもしれません。
一方、現場スタッフからも「何をお願いしてよいか分からない」「指導に時間がかかる」といった声が上がる可能性があります。
大切なのは、障害のある人だけに特別な対応を考えることではありません。
本人が働きやすく、周囲のスタッフも安心して一緒に仕事ができる環境を整えること。
その視点が、障害者雇用を成功させる第一歩となります。
障害者雇用の定着につながる3つのポイント
1. 業務内容と指示の出し方を明確にする
医療機関では、日々の業務状況に応じて臨機応変な対応が求められます。
しかし、発達障害などの特性によっては、曖昧な指示や急な予定変更に戸惑いやすい方もいます。
例えば、
「手が空いたら、できるところまで片付けておいて」
という指示。
指示を出した側にとっては何気ない言葉でも、受け取る側は「どこを片付ければよいのか」「いつまでに終わらせればよいのか」と迷ってしまう可能性があります。
そこで、
「午後2時までに、この棚にある書類を日付順に並べてください。終わったら担当者に報告してください」
と伝えれば、作業内容や完了基準が明確になります。
もちろん、障害のある方すべてに同じ指示方法が適しているわけではありません。
本人の得意・不得意を確認しながら、口頭説明、文章、写真付きマニュアルなど、理解しやすい方法を選ぶことが重要です。
そして、こうした業務指示の明確化は、障害者雇用だけに役立つものではありません。
新人スタッフへの教育や業務の標準化にもつながるため、医院全体の生産性向上にも効果が期待できます。
2. 「配慮」と「仕事を任せないこと」を混同しない
障害者雇用の現場で考えておきたいのが、合理的配慮のあり方です。
合理的配慮とは、障害のある方が能力を発揮し、ほかのスタッフと同じように働く機会を得られるよう、個々の状況に応じて必要な調整を行うことです。
ただし、配慮することと、仕事を任せないことは同じではありません。
例えば、ミスを心配するあまり、簡単な作業しか任せない。
本人が新しい仕事に挑戦したいと希望しても、「無理をしない方がいい」と断ってしまう。
こうした対応は、善意から生まれることもあるでしょう。
しかし、本人の成長機会を狭めてしまう可能性もあります。
大切なのは、「できないこと」に目を向けるだけでなく、「どのような環境や方法であればできるのか」を一緒に考えることです。
例えば、複数の指示を同時に受けることが苦手であれば、指示を一つずつ伝える。
作業の手順を覚えることに時間がかかるのであれば、チェックリストを活用する。
必要な配慮を行いながら、本人の能力に応じて仕事の幅を広げていく。
その積み重ねが、働く自信と成長につながります。
なお、合理的配慮は本人との対話を通じて検討することが基本であり、事業主には過重な負担とならない範囲で提供する義務があります。
3. 本人と職場の双方を支える相談体制をつくる
障害者雇用の定着支援というと、障害のある本人への支援をイメージする方が多いかもしれません。
しかし、実際には受け入れる職場への支援も同じくらい重要です。
「どこまで仕事を任せてよいのだろうか」
「注意したいことがあるけれど、どのように伝えればよいのか」
現場スタッフがこうした悩みを抱えることは、決して珍しいことではありません。
そして、その悩みを相談できる相手がいなければ、受け入れ側にもストレスが蓄積してしまいます。
そこで重要になるのが、定期的な面談や外部支援機関との連携です。
本人の体調や業務上の困りごとを確認するだけでなく、指導担当者からも状況を聞き取り、必要に応じて業務内容や指示方法を見直す。
就労移行支援事業所などの外部機関と連携できれば、本人と職場の間に立ち、双方の認識を整理することも可能になります。
障害者雇用は、本人だけが頑張るものでも、現場スタッフだけが負担を抱えるものでもありません。
双方が安心して働ける仕組みを整えることが、結果として定着率の向上につながるのです。
障害者雇用は、医院全体の組織づくりを見直すきっかけになる
ここまで障害者雇用の定着について説明してきましたが、もう一つ考えておきたいことがあります。
それは、障害者雇用のために整えた仕組みが、ほかのスタッフにとっても働きやすい環境につながるという点です。
例えば、業務マニュアルを整備すれば、新人スタッフも仕事を覚えやすくなります。
指示系統を明確にすれば、スタッフ間の認識違いや業務の重複を減らせるでしょう。
また、定期的な面談を通じて困りごとを把握する仕組みは、障害の有無にかかわらず、スタッフの離職防止にも役立ちます。
つまり、障害者雇用に取り組むことは、単に雇用人数を増やすだけではなく、医院全体の働き方や組織運営を見直す機会にもなるのです。
まとめ:障害者雇用の成功は「働き続けられること」にある
障害者雇用を成功させるために、必ずしも特別な設備や複雑な制度が必要なわけではありません。
本人の特性を理解し、仕事の進め方を工夫する。困ったときには相談できる環境を整え、少しずつ成長の機会を広げていく。
こうした日々の積み重ねが、長く働き続けられる職場づくりにつながります。
株式会社ライフビジョンコンサルタンツでは、医療機関の人事・労務コンサルティングに加え、就労移行支援事業所「ディーキャリアかごしまオフィス」を運営しています。
医療機関の組織運営と障害のある方の就労支援、その両方に関わっているからこそ、採用する側と働く側の視点を踏まえた支援を大切にしています。
障害者雇用に向けた業務の整理や受け入れ体制の検討、採用後の定着支援など、全国の医療機関をサポートしています。
「障害者雇用を始めたいが、何から準備すればよいか分からない」
「採用後の指導方法や職場の受け入れ体制に不安がある」
「障害者雇用をきっかけに、医院全体の業務改善にも取り組みたい」
そんな悩みを抱える院長や事務長の皆様は、ぜひ一度ご相談ください。
【全国対応】医療・介護機関向け オンライン人事労務無料相談(30分)
- 障害者雇用に向けた業務の切り出しを相談したい
- 採用後の定着につながる職場環境を整えたい
- 障害者雇用と組織づくりを一体的に進めたい
(お電話でのご相談:080-7639-2040 / 東京・鹿児島オフィス)